前回のブログで「相続は争族です。事前の準備が重要です。」的なコメントをしましたが、一つ言い忘れたことがありました。それは、
「争族はお金持ちに限った話ではない。」という点です。
平成27年1月1日より相続税の基礎控除額が引き下げられることから、相続税の対象となる相続が増加するというのもあるのですが、そもそも相続税が発生しようがしまいが「争族」は起こりうるのです。
相続財産のほとんどが現金預金等の金融資産のみであれば、それを相続人で配分すればすむ話ですが、実際の相続で対象となる資産というのは「土地・建物」といった不動産が多いと思います。この不動産、おいそれと配分できませんよね。昔は家長制度の流れから家を継ぐ長男が全ての遺産を相続し、他の兄弟は相続放棄、というのもあったかもしれませんが、個人の権利が制度的・精神的に強くなった昨今ではそんなのもはや絵空事(笑)みなさんしっかり自身の権利を主張されます。
さてここで相続が発生し、遺産が被相続人(母)が住んでいた土地建物(時価4,500万・一軒家)のみだったとします。相続人は子3人で長男が母と同居しており、他の兄弟は皆独立してそれぞれ家庭を持っているケースを考えます。相続人が全て相続の権利を主張し、かつ母の遺言がない場合、相続の方法は以下の3通りくらいしかないかと思われます。
- 長男が土地建物を相続し、2人の兄弟に1,500万ずつ支払う(代償分割といいます)
- 土地建物を処分(売却)し、兄弟全員が1,500万ずつ受け取る(換価分割といいます)
- 土地建物を兄弟3人で共有する
1の場合は長男が支払資金を確保することが必要となります。また、2の場合は長男が住んでいた家を出ていく必要があります。残るは3ですか。これは問題がなさそう?いえいえとんでもない。大いに問題あります。仮に兄弟が仲が良く、長男がそこに住み続けてもいいことになれば問題はないようにも思われますが、将来兄弟仲が悪くなったらどうでしょうか?あるいは兄弟の子達が将来相続を受けることになったとき権利者は何人?兄弟にそれぞれ2人ずつ相続人がいたとしたら3×2=6人です。6人で共有?果たしてうまくいくでしょうか?
・・・といった具合で、いずれにせよ何か「キナ臭さ」を感じませんでしょうか?たとえ相続税が発生しなくとも、相続はおおいに「争族」になりうるのです。我々には関係ない、と傍観するのではなく「争族」は自身の身にも降りかかりうるものだという意識は最低限持っておく必要があるかと思います。