岡山市倉敷市の公認会計士 税理士 森島会計事務所

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会計

東芝でのれんの減損が7000億円超

東芝が3/14に予定していた決算発表を延期するという報道がなされました。東芝の会計処理で話題に上がっているのが、「のれんの減損が7000億円超」となる点ですが、そもそものれんって何?というのが一般の感覚だと思います。

のれんの定義は様々ですが、平たく言うと「ブランド」でしょうか。例え同じ材質でできていたとしても、シャネルのバッグとそこらの雑貨屋で売られているバッグとでは、前者の方が高い値段で取引されます。ブランドとはその上乗せ金額であると言えます。

企業もバッグと同じなんです。東芝は原発事業を行うウェスチングハウス社を買収するにあたり、7000億円を超える上乗せ価格を払ったということです。

ではなぜ上乗せ価格を払うかというと、その上乗せ価格をさらに上回る収益を原発事業で得られると東芝が判断したからです。その「将来の予想」が7000億という資産の計上に繋がっていたわけです。

ここで冷静に考えて頂きたいのが、「予想」で資産がのっかるという事実です。現金預金が7000億円あるのと、のれんが7000億円あるのとではその内容に天地の差があるのですが、「7000億の資産である」という点においては何ら変わらないのです。コレ、怖くないですか?会計って皆さんの常識とはちょっと外れた世界なんだということがわかっていただければ幸いです。

今回、「そののれんに7000億円の価値はないんじゃない?」と監査法人に指摘されたため、損失(=減損)となってしまいました。

繰延税金資産、865社で積み増し

2014年3月期決算にてマツダやセイコーエプソンなど865社が繰延税金資産を積み増し、当期純利益が大きく改善したそうです(日経5/28朝刊より)。そもそも繰延税金資産とは何ぞや?ですが、(小難しい)理屈を知りたい方はコチラ

税効果会計って①

税効果会計って②

税効果会計って③

 

イメージだけでつかむなら、払った税金(法人税や住民税等)の一部を税金の「前払い」と考え、その前払い分を貸借対照表の「資産」として計上することです。資産として計上するということはその分、当期純利益が増えると思っていただいて結構です。

資産は通常、将来会社に「お金が入ってくる」がゆえ資産なのですが、繰延税金資産は将来会社に「お金の支払いがない」がゆえの資産です。税金を前払いしているからその分将来税金を支払わなくていいという理屈です。

・・・今の説明だけでも何ともボンヤリとしてませんか?もちろん会計理論上はキチンと説明のつく資産ですが、現場の感覚から言うと架空(言い過ぎ(笑))・・・もとい、何となく実在性に乏しい資産なんですね。

皆さんが株式投資(上場会社)をされる際、もし投資先の決算書を見る機会があるのなら、この繰延税金資産に注目してみて下さい。業績が不安定にもかかわらず、多額の繰延税金資産が計上されているようでしたら、その会社の利益はかなり怪しいと疑ってかかっても差支えないかもしれません。

 

 

簿記の勉強

私もこの業界に入って長いのですが、大学ではじめて「簿記」を勉強したときは「なんてとっつきにくい科目なんだ」と憤慨(笑)したものです。最初はとりあえず「仕訳」を覚えさせられます。でもその仕訳の意味がわからないんですね。商業高校出身の友人に尋ねても、「いや、そういうものだからとりあえず覚えて」と捨て置かれた記憶があります。意味がわからないものを覚えていく作業ははっきり言って苦痛です。なので大学では「会計」から遠ざかっていきました(泣)
なんでもそうですが、やはり勉強する対象の「全体像」を把握しないと興味が失せます。木ではなく森をまず知りたい。では簿記でいう森って何なんだろう?これ結構難しくないですか?
そこで簿記の森(=全体像)を私なりにまとめてみました。ダラダラ書いても締りがないので必要最低限の部分だけ、A4横一枚に収まるように。よかったら参考にしてみてください。

連結会計とは

前回「連結納税」について少しお話しましたが、今回は「連結」つながりで「連結会計」について少し触れたいと思います。連結会計とは親会社のみならず、子会社等を含めたグループ全体の財政状態及び経営成績等を開示する会計制度のことをいいます。連結会計により作成された財務諸表を連結財務諸表と言い、上場会社ではこの連結財務諸表の作成が金融商品取引法により義務付けられています。つまり「連結納税」とは似て非なるものなんですね。

連結会計を行い連結財務諸表を作成・開示する目的は、親会社を中心とする企業グループの経営活動の実態を把握するためです。例えば、親会社が業績が良くともそれが子会社に対する押込販売によるもので、実は子会社の業績は悪かったとします。もし親会社単体の財務諸表を見ると好成績のため、投資家はこの会社は好調だと誤った判断をしてしまう恐れがあります。でも連結財務諸表を見ると、子会社の不調も反映された状態であるため、投資家はこの企業グループの実態を正確に把握できるでしょう。連結財務諸表で企業グループの業績を判断するのはもはや常識で、有価証券報告書においてもまず連結財務諸表が先に開示され、個別の財務諸表はその後の開示となります。

一般的な中小企業にはこの連結財務諸表の作成義務はありませんが、個人的にはグループ企業がある経営者の方には是非とも作成していただきたいと考えています。グループ全体で業績を把握しないと経営判断を誤る恐れがありますからね。作成方法も大して難しくありません。(1)グループ企業の財務諸表を単純に合算し、そこから(2)内部取引を消去するだけです。イメージは下記表をご参照ください。連結会計は他にも「未実現利益の消去」等ややこしい処理があるのですが、中小企業でそこまでやる必要はないです。業績をある程度把握できればいいんです。足して消去する。これだけで構わないと思います。

税効果会計って③

前回からの続きです

(前回)税効果会計って②

しつこいようですが再度おさらいです。税効果会計とは税前利益に税率を乗じた額を税金費用とする手続きです。イメージとして添付資料を参考にしてください。税率を超過する部分40は繰延税金資産として計上されます。今回は当期に発生した超過分40のみでしたが、繰延税金資産は過去の超過分も含まれる点にご留意ください。そしてこの繰延税金資産は将来税金を抑える効果がある限りにおいて計上することができるということです。ここで「回収可能性がある場合」と言えば、「お、アナタわかってるね」という風に受け止められますので機会を見て使ってみてください。

今までの説明では超過分の例として、賞与引当金繰入額を引用しました。これを会計用語で一時差異と言います。一時差異とは将来解消される差異です。賞与引当金繰入額100はその時は税金計算上の損になりませんが、将来賞与が支払われた時に税金計算上の損になります。つまりいつかは税金計算上の損になるものを言います。これに対して当期のみならず、未来永劫税金計算上の損にならないものもあります。例としては交際費や寄附金ですね。なぜこれらが損にならないかの説明はここではしませんが、政策上そういうものがあるんだと思ってください。これらを永久差異と言います。今まで述べた税効果会計の対象となるのは一時差異のみであることにご留意ください。なので、税効果会計を適用しても、永久差異がある場合はその分税率が調整されないまま終わってしまうのです。

長くなりましたが、税効果会計の説明はこの辺で終了します。短くしたかったのですが結局長くなってしまいました。最後に、税効果会計の考え方には(1)資産負債法と(2)繰延法の2つがあります。今回の説明は(2)繰延法の考え方で行いました。でも、今の制度上の考え方は(1)資産負債法なんです。(2)で説明した方がわかりやすいのでそうしたまでです。その辺りのツッコミはご遠慮いただければ幸いです(笑)

<添付資料>

税効果会計って②

前回からの続きです。

(前回)税効果会計って①

本来は税率40%で税金400のはずが、実際は税率44%で税金440でした。税額ベースで40過大になってしまってますね。これはつまり賞与引当金繰入額100に対する税金40そのものです。税効果会計ではこの40は当期に前倒しで払った税金と考えます。当期の賞与引当金繰入額100は損益計算書上の損であるものの、税金計算上の損ではないためその分税金40が発生してしまいました。しかし一方で、翌期以降、実際に賞与100が支払われたときは、損益計算書上の損ではないものの、税金計算上の損となるため、その分の税金40は逆に抑えられる結果となります。税前利益との対応という視点では、当期は税金40が過大に支払われ、翌期以降は税金40が過少に支払われていると考えられます。そこで、税前利益と対応させて当期の税金40を繰延べて翌期以降の損にするという発想がでてきます。

これ何かに似てませんか?前払費用ですよね。当期の支払額は前払費用として資産計上し、翌期以降の損として処理するものです。

(以下、添付資料の”税効果適用後”の表と見比べてご覧下さい)

法人税等の下に法人税等調整額(以下、調整額)が現れました。前倒しで払った税金40を翌期以降の損とするため一旦損のマイナスとして扱います。一方で、将来損として処理するための資産勘定として繰延税金資産40が貸借対照表に現れてます。これが税効果会計の処理です。税金440-調整額40=400が税金費用となります。税金(=支払税額)ではないんです。税金費用なんです。この用語の使い回しがミソです。これを税前利益で割ってみてください。実際税率が40%になりましたね。これでめでたしめでたし。まさに、「税前利益に税率を乗じた額を税金費用にする手続き」が実施できました。今まで延々説明してきましたが、税効果会計とは要は、税金費用を本来の税率にするためのものなんだと覚えて頂ければ結構です。

ところで当期純利益を見比べて下さい。税効果適用前560→適用後600で40増加してますね。会社の経済実態が何も変わっていないにもかかわらずです。これが税効果会計が過去、会社に重宝がられた所以なんですね。ですが税効果会計には大きな落とし穴が一つあります。この繰延税金資産40が本当に資産足りうるかという判断が必要であるという点です。もう少し噛み砕くと、この40はもともとの賞与引当金繰入額100が翌期以降に税金計算上の損とされ、税金40分だけ抑えられるところに価値があります。将来のキャッシュアウトを40減少させるところに価値があり、それがまさに資産なのです。もし仮に、この会社がずっと赤字会社ならどうでしょう。翌期以降に100が税金計算上の損となってももともと赤字で税金が発生しないのだから、税金を抑える効果がありません。この場合、繰延税金資産は「回収可能性がない」として資産計上できなくなってしまうのです。要は、業績の悪い会社は税効果会計を適用できない場合が多いと考えてください。

税効果会計を適用すると利益が増加しますが、会社の業績が悪化すると繰延税金資産も計上できなくなり損が増え、さらに業績を悪化させるんですね。税効果会計は調子のいい者にはひたすらおだててその気にさせ、調子が悪くなると手のひらをかえす。溺れる者をさらに足蹴にする制度だなぁという印象です。私がこんなこと言うと怒られるかもしれませんが、正直悪趣味な数字遊びに過ぎない気がします。

<添付資料>

次回へ続く

(次回)税効果会計って③

税効果会計って①

中小企業ではほとんどお目にかかりませんが、上場会社はほぼ100%適用(強制適用)させられているであろう会計処理の一つに税効果会計があります。税効果会計とは、企業会計上の収益または費用と課税所得計算上の益金または損金の認識時点の相違により・・・(長いので以下省略)。・・・・いやぁよくわかりませんね(笑)

超ざっくりで言うと、税引前当期純利益(以下、税前利益)に税率を乗じた額を税金費用とする手続きです。・・これでもピンときませんね。

税前利益は文字通り税金を差し引く前の利益であり、そこから税金(法人税等)を差し引いて当期純利益、いわゆる最終利益が算定されます。理屈で考えると税前利益×税率=税金になるはずですが、現実はそう簡単にはいきません。実際は課税所得×税率=税金となります。ここで課税所得とは「税金計算をする上での」税前利益と考えてください。実は税前利益≠課税所得だから話がややこしくなります。その原因は、損益計算書では損として認められるけど税金計算上は損として認められないモノが存在することにあります。具体的には賞与引当金繰入額などがあります。

(以下、添付資料の”税効果適用前”の表と見比べてご覧下さい)

例えば、損益計算書上の税前利益が1,000でそのうち賞与引当金繰入額(損)が100あったとします。損益計算書における税前利益は当然1,000ですが、税金計算上は賞与引当金繰入額100が損として認められないためそこから省く必要があります。よって、税前利益1,000+賞与引当金繰入額100=課税所得1,100となります。課税所得1,100に税率(ここでは40%とします)を乗じた440が税額となります。これでめでたしめでたし・・とは残念ながらいきません。

損益計算書に話を戻すと、税前利益1,000で税金(法人税等)440となります。税金の税前利益に対する割合は440÷1,000=44%となります。アレ?税率は40%でしたね。実際の税率は44%。違っちゃいましたね。今回は計算過程をお話していますのでこの結果は当り前のこととして受け止めればいいのですが、偉い学者先生達が「これはけしからん」と言い出したんですね。つまり、税前利益1,000に対応する税金(法人税等)は400で、税率は40%でなければならない。と主張されました。この主張の解決策が税効果会計となります。先に述べた「税前利益に税率を乗じた額を税金費用とする手続き」を実施することとなります。

<添付資料>

次回へ続く

(次回)税効果会計って②

決算書を読む

今の時代、経営者は自社の「決算書」を読めるのが必須であると言われ、巷では経営者向けの「決算書の読み方」的なセミナーや研修が溢れています。なぜ決算書を読めなければならないか。決算書とは会社の実態を数値で表現した書類であり、いわば自社のカルテのようなものです。カルテを読んで自分の現況を知り、将来への対策を立て、実行することが経営者の責務です。よってその取っ掛りとして、当然決算書が読めなければなりません。

決算書を作るためには日々の取引を記帳し、決算時にそれを集計・整理します。日々の記帳は「仕訳」と言われ、これにもルールがあります。ただ、経営者がこの仕訳を理解する必要はないと私は考えます。これは経理の仕事です。経営者は仕訳を経て最終的に作成された決算書が読めればそれでよいのです。決算書を読んで自社の現況を把握できること。それが経営者のとりあえずの目標となるでしょう。

ただ、一言だけ言わせていただくと、決算書がどのような過程を経て作成されるか、そのことを「直感的に」理解していた方がよいというのが私の持論です。「仕訳」の知識はいらずとも作成過程を「直感的に」理解している。この件についてはまた日を改めて発信していきたいと思います。

 

仕訳の意味って

いきなりですが私は簿記というのは非常に敷居の高いツールだと思っています。簿記の初学者はまず「仕訳」を覚えることから始めます。仕訳の意味は会計学を学べばある程度わかるのですが、初学者がいきなりそれを理解するのは至難の技です。ですからとりあえず仕訳を覚えるのです。例えば次の仕訳を見てみましょう。

(借方)現金預金1,000,000 (貸方)資本金1,000,000

簿記に馴染みのある方なら「出資が1,000,000円あった」と即答できるでしょう。でも初学者の方はまず、「なぜ資本金が右なんだろう?」と考えます。これ結構深いんですよね。でも会計学の知識がない状態であれこれ考えても答えはでません。だからとりあえず覚えるのです。これ言語の学習に似てる気がします。例えば英語で「愛してます」は「I love you」ですが、なぜloveは愛なんだ?なんて考えませんよね。こういうもんだと割り切るのが必要です。簿記も同じです。そういうもんだ。それがルールなんだと割り切って覚えてしまう。これが重要になります。

だから「素直な方」は簿記は馴染みやすいと思うんです。言われたとおりまずは仕訳を覚えればいいからです。一方で私のような「ヒネクレ者」は苦労します。なんで資本金が右なんだ?と突っかかってしまうからです。もちろん会計学を学べば理由はわかるのですが、その理屈は初学者には理解できない。結局先に進めないんですね。勉強したての頃、結構苦労した覚えがあります。

私は皆様に簿記にまず馴染んでいただきたいと考えています。でも先程述べた通り、簿記って実は敷居が高い。直感的に「仕訳」が理解できる方法って何かないかな?その答えを見つけるのが私の会計人としてのテーマの一つでもあるのです。