岡山市倉敷市の公認会計士 税理士 森島会計事務所

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2012年

税効果会計って②

前回からの続きです。

(前回)税効果会計って①

本来は税率40%で税金400のはずが、実際は税率44%で税金440でした。税額ベースで40過大になってしまってますね。これはつまり賞与引当金繰入額100に対する税金40そのものです。税効果会計ではこの40は当期に前倒しで払った税金と考えます。当期の賞与引当金繰入額100は損益計算書上の損であるものの、税金計算上の損ではないためその分税金40が発生してしまいました。しかし一方で、翌期以降、実際に賞与100が支払われたときは、損益計算書上の損ではないものの、税金計算上の損となるため、その分の税金40は逆に抑えられる結果となります。税前利益との対応という視点では、当期は税金40が過大に支払われ、翌期以降は税金40が過少に支払われていると考えられます。そこで、税前利益と対応させて当期の税金40を繰延べて翌期以降の損にするという発想がでてきます。

これ何かに似てませんか?前払費用ですよね。当期の支払額は前払費用として資産計上し、翌期以降の損として処理するものです。

(以下、添付資料の”税効果適用後”の表と見比べてご覧下さい)

法人税等の下に法人税等調整額(以下、調整額)が現れました。前倒しで払った税金40を翌期以降の損とするため一旦損のマイナスとして扱います。一方で、将来損として処理するための資産勘定として繰延税金資産40が貸借対照表に現れてます。これが税効果会計の処理です。税金440-調整額40=400が税金費用となります。税金(=支払税額)ではないんです。税金費用なんです。この用語の使い回しがミソです。これを税前利益で割ってみてください。実際税率が40%になりましたね。これでめでたしめでたし。まさに、「税前利益に税率を乗じた額を税金費用にする手続き」が実施できました。今まで延々説明してきましたが、税効果会計とは要は、税金費用を本来の税率にするためのものなんだと覚えて頂ければ結構です。

ところで当期純利益を見比べて下さい。税効果適用前560→適用後600で40増加してますね。会社の経済実態が何も変わっていないにもかかわらずです。これが税効果会計が過去、会社に重宝がられた所以なんですね。ですが税効果会計には大きな落とし穴が一つあります。この繰延税金資産40が本当に資産足りうるかという判断が必要であるという点です。もう少し噛み砕くと、この40はもともとの賞与引当金繰入額100が翌期以降に税金計算上の損とされ、税金40分だけ抑えられるところに価値があります。将来のキャッシュアウトを40減少させるところに価値があり、それがまさに資産なのです。もし仮に、この会社がずっと赤字会社ならどうでしょう。翌期以降に100が税金計算上の損となってももともと赤字で税金が発生しないのだから、税金を抑える効果がありません。この場合、繰延税金資産は「回収可能性がない」として資産計上できなくなってしまうのです。要は、業績の悪い会社は税効果会計を適用できない場合が多いと考えてください。

税効果会計を適用すると利益が増加しますが、会社の業績が悪化すると繰延税金資産も計上できなくなり損が増え、さらに業績を悪化させるんですね。税効果会計は調子のいい者にはひたすらおだててその気にさせ、調子が悪くなると手のひらをかえす。溺れる者をさらに足蹴にする制度だなぁという印象です。私がこんなこと言うと怒られるかもしれませんが、正直悪趣味な数字遊びに過ぎない気がします。

<添付資料>

次回へ続く

(次回)税効果会計って③

税効果会計って①

中小企業ではほとんどお目にかかりませんが、上場会社はほぼ100%適用(強制適用)させられているであろう会計処理の一つに税効果会計があります。税効果会計とは、企業会計上の収益または費用と課税所得計算上の益金または損金の認識時点の相違により・・・(長いので以下省略)。・・・・いやぁよくわかりませんね(笑)

超ざっくりで言うと、税引前当期純利益(以下、税前利益)に税率を乗じた額を税金費用とする手続きです。・・これでもピンときませんね。

税前利益は文字通り税金を差し引く前の利益であり、そこから税金(法人税等)を差し引いて当期純利益、いわゆる最終利益が算定されます。理屈で考えると税前利益×税率=税金になるはずですが、現実はそう簡単にはいきません。実際は課税所得×税率=税金となります。ここで課税所得とは「税金計算をする上での」税前利益と考えてください。実は税前利益≠課税所得だから話がややこしくなります。その原因は、損益計算書では損として認められるけど税金計算上は損として認められないモノが存在することにあります。具体的には賞与引当金繰入額などがあります。

(以下、添付資料の”税効果適用前”の表と見比べてご覧下さい)

例えば、損益計算書上の税前利益が1,000でそのうち賞与引当金繰入額(損)が100あったとします。損益計算書における税前利益は当然1,000ですが、税金計算上は賞与引当金繰入額100が損として認められないためそこから省く必要があります。よって、税前利益1,000+賞与引当金繰入額100=課税所得1,100となります。課税所得1,100に税率(ここでは40%とします)を乗じた440が税額となります。これでめでたしめでたし・・とは残念ながらいきません。

損益計算書に話を戻すと、税前利益1,000で税金(法人税等)440となります。税金の税前利益に対する割合は440÷1,000=44%となります。アレ?税率は40%でしたね。実際の税率は44%。違っちゃいましたね。今回は計算過程をお話していますのでこの結果は当り前のこととして受け止めればいいのですが、偉い学者先生達が「これはけしからん」と言い出したんですね。つまり、税前利益1,000に対応する税金(法人税等)は400で、税率は40%でなければならない。と主張されました。この主張の解決策が税効果会計となります。先に述べた「税前利益に税率を乗じた額を税金費用とする手続き」を実施することとなります。

<添付資料>

次回へ続く

(次回)税効果会計って②

特定支出控除の見直し

先日、サラリーマン税制について記事を書きましたが、もうひとつ頭の片隅にでも置いていていただきたいものに、給与所得者の特定支出控除の特例があります。特定支出控除というのは、職務の遂行にあたり直接必要な支出があった場合、一定額について所得から控除できる制度です。実は従来からあったのですがイマイチ使い勝手が悪くほとんど利用されていませんでした。しかし、平成24年度税制改正により制度が充実し、対象となる方も増えると思われますので、ここでお話ししたいと思います。改正は平成25年1月1日以降となりますので、ここでは改正後に絞って話を進めていきます。

<改正後 特定支出控除の特例について>

給与所得者(基本、サラリーマンですね)が各年において特定支出をした場合において、その年中の特定支出の額の合計額が、その年中の給与所得控除額の2分の1相当額(最高125万円)を超えるときには、その年分の給与所得の金額は、次の算式により求めた金額とすることができます。

【算式】

給与等の収入額-{給与所得控除額+(その年中の特定支出の額の合計額-給与所得控除額の1/2(最高125万円)}=給与所得の金額

式だけ見ると何のことやらですが、要は、特定支出>給与所得控除額×1/2のときに、その超過分を給与所得控除額に上乗せできるというものです。
また、ここで言う「特定支出」は以下のことを指します。

  1. 研修費
  2. 通勤費
  3. 転居費
  4. 帰宅旅費
  5. 資格取得費
  6. 勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費)ただし、65万円を上限

例によって図解していますのでご参照ください。

サラリーマンの確定申告

衆院選圧勝で勢いに乗る自民党が早速、と言うかようやく平成25年度税制改正の議論を始めました。消費税が8%に上がる平成26年4月を控え、増税の影響が大きい住宅需要の増減を和らげる対策は急務となります。自民党税制調査会は平成25年末で期限が切れる住宅ローン減税を3年程度延長する方針を固めたとのことです。

ところで、住宅ローン減税は普段税金を意識されないサラリーマンの方々にも馴染みがある制度だと思います。ご存知、住宅取得のための借入金残高に一定率(平成24年、25年住宅取得の場合は1.0%)を乗じた額について、年間の所得税額を上限に控除するものです(10年間)。注意が必要なのは、普段は年末調整のみで課税関係が終了されるサラリーマンの方であっても、住宅ローン減税の適用初年度については確定申告をしなければならない点です。ただし2年目以降は一定の書類を会社に提出することを要件に年末調整のみで終わらせることができます。

住宅ローン減税と並んでサラリーマンが押さえておくべき制度に医療費控除があります。年間医療費が10万を超える場合はその超過分を年間の所得税額を上限に控除できるものです。これはその対象となる年度毎に確定申告をする必要があります。まとめると、

  • 住宅ローン減税(初年度のみ)
  • 医療費控除

この2点はサラリーマンであっても確定申告の必要がある2大税制であると考えて差し支えありません。ただ、確定申告の作成をどうするか?悩ましいですよね。市販されてる本で勉強すればいいのでしょうが時間が惜しいです。一方で税理士に頼むとコストがかかる(私が言うのもなんですが・・)。そこでオススメなのが「無料相談」に行かれることです。だいたい2月の下旬から3月の上旬にかけて市の役場や公民館等で税理士が無料で確定申告を作成・提出してくれます。これ全国でやっていますので、該当する方は是非管轄の税務署にお問い合わせください。

ただ、税理士である私から一つだけお願いです。医療費控除を適用される方は、領収書の束を持ってきていただくことになりますが、束だけを持ってくるのではなく、簡単で構いませんので領収書の一覧表あるいは集計表を作成して併せて持って来ていただけると非常にありがたいです。

相続の放棄又は限定承認

相続が発生した場合における相続税申告までのスケジュールは下記のとおりとなります。

  1. 相続の開始
  2. 相続の放棄又は限定承認の決定(相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内
  3. 準確定申告(相続の開始があったことを知った時から4ヶ月以内)
  4. 相続税の申告・納付(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)

この中で一番気をつけておきたいのは2です。「相続の放棄」とは文字通り相続人が相続に関する権利及び義務を一切を放棄することであり、「相続の限定承認」とは相続を受けた人が、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐことです。例えば、プラス財産が1,000でマイナス財産が1,500ならば、プラス財産を1,000、マイナス財産を1,000相続することになります。相続の放棄又は限定承認をする場合、相続人は家庭裁判所にその旨を申述しなければなりません。この時、相続人が全員で申述する必要があります。相続の放棄又は限定承認がなされない場合、原則通り相続人は全ての財産を相続することになります。これを単純承認と言います。

さて、話を元に戻しますが、なぜ相続の放棄又は限定承認の決定が一番気をつけるべきことなのか?もし被相続人がサラ金から借金があった場合、業者は相続の放棄又は限定承認の期限である3ヶ月を過ぎてから取立てに来ます。当然ですよね。もし3ヶ月経過する前に取立てに来たら、相続人は相続の放棄か限定承認する可能性が高いです。そうなると借金全額の回収が困難になってしまう。だから3ヶ月経過し、放棄等ができない状況を待って姿を現すのです。相続が開始したら何よりもまず、借金の存在を3ヶ月以内に明らかにすること。これを最優先にすることを頭に入れておいてください。

消費税の事業者免税制度改正

消費税の免税事業者の判定について、以下の変更がありますのでご留意ください。

(改正前)

基準期間(前々期)の課税売上高が1,000万超の場合、当期は課税事業者となる

(改正後)

次のいずれかを満たす場合、当期は課税事業者となる

  1. 基準期間(前々期)の課税売上高が1,000万超
  2. 前期上期の課税売上高が1,000万超(給与支払額でも可)

平成 25年1月1日以後に開始する事業年度(個人は平成25年以降)より適用されます。

詳細は下表をご参照ください。

復興特別所得税

平成25年1月1日から平成49年12月31日(25年間も!)までに発生する、以下の所得については従来の源泉所得税に加え、「復興特別所得税」の課税対象となります。

  1. 給与・賞与・退職金
  2. 報酬
  3. 配当金支払
  4. 受取利息・配当金の受け取り

源泉徴収すべき復興特別所得税の額は、源泉徴収すべき所得税の額の2.1%相当額とされており、復興特別所得税は、所得税の源泉徴収の際に併せて源泉徴収することとされています。

【源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額】

支払金額等×合計税率(所得税率(%)×102.1%)=源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額

→端数切捨

具体的計算は下記表をご参照ください。

決算書を読む

今の時代、経営者は自社の「決算書」を読めるのが必須であると言われ、巷では経営者向けの「決算書の読み方」的なセミナーや研修が溢れています。なぜ決算書を読めなければならないか。決算書とは会社の実態を数値で表現した書類であり、いわば自社のカルテのようなものです。カルテを読んで自分の現況を知り、将来への対策を立て、実行することが経営者の責務です。よってその取っ掛りとして、当然決算書が読めなければなりません。

決算書を作るためには日々の取引を記帳し、決算時にそれを集計・整理します。日々の記帳は「仕訳」と言われ、これにもルールがあります。ただ、経営者がこの仕訳を理解する必要はないと私は考えます。これは経理の仕事です。経営者は仕訳を経て最終的に作成された決算書が読めればそれでよいのです。決算書を読んで自社の現況を把握できること。それが経営者のとりあえずの目標となるでしょう。

ただ、一言だけ言わせていただくと、決算書がどのような過程を経て作成されるか、そのことを「直感的に」理解していた方がよいというのが私の持論です。「仕訳」の知識はいらずとも作成過程を「直感的に」理解している。この件についてはまた日を改めて発信していきたいと思います。

 

遺贈について

大女優、森光子さんがお亡くなりになり、残された遺言書に財産の一部をジャニーズの東山紀之さんに渡す旨の記載があったとしてちょっとした話題になっています。相続人は被相続人の家族、具体的には配偶者と①子②親③兄弟姉妹に限られます。この番号は優先順位で、①子がいなければ②親、親もいなければ③兄弟姉妹が対象となります。つまり、赤の他人は相続人にはなり得ないのですが、被相続人が遺言で誰々に遺産を与えると記載した場合、その者は他人であっても、遺産を手にすることができるんですね。これを「遺贈」と言います。今回の件はこれに該当します。

この遺贈という制度、遺族側の視点で言うとたまったモンじゃありません。赤の他人がズカズカ入ってきて財産をかっさらっていくわけですから。森光子さんは家族がいらっしゃらないとのことなので、今回は問題ないですが、通常は超揉めますね。それに一定限度歯止めをかける制度として、「遺留分の減殺請求」というのがあります。遺言の内容に関わらず、遺族が遺産の一部を請求できるというものです。

いずれにせよ、相続はただでさえ「争族」なのに他人まで入ってきたらまさに群雄割拠ですよ。相続の円滑な運営のためにも、「遺贈」はほどほどにと声を大にして言いたい訳であります。

仕訳の意味って

いきなりですが私は簿記というのは非常に敷居の高いツールだと思っています。簿記の初学者はまず「仕訳」を覚えることから始めます。仕訳の意味は会計学を学べばある程度わかるのですが、初学者がいきなりそれを理解するのは至難の技です。ですからとりあえず仕訳を覚えるのです。例えば次の仕訳を見てみましょう。

(借方)現金預金1,000,000 (貸方)資本金1,000,000

簿記に馴染みのある方なら「出資が1,000,000円あった」と即答できるでしょう。でも初学者の方はまず、「なぜ資本金が右なんだろう?」と考えます。これ結構深いんですよね。でも会計学の知識がない状態であれこれ考えても答えはでません。だからとりあえず覚えるのです。これ言語の学習に似てる気がします。例えば英語で「愛してます」は「I love you」ですが、なぜloveは愛なんだ?なんて考えませんよね。こういうもんだと割り切るのが必要です。簿記も同じです。そういうもんだ。それがルールなんだと割り切って覚えてしまう。これが重要になります。

だから「素直な方」は簿記は馴染みやすいと思うんです。言われたとおりまずは仕訳を覚えればいいからです。一方で私のような「ヒネクレ者」は苦労します。なんで資本金が右なんだ?と突っかかってしまうからです。もちろん会計学を学べば理由はわかるのですが、その理屈は初学者には理解できない。結局先に進めないんですね。勉強したての頃、結構苦労した覚えがあります。

私は皆様に簿記にまず馴染んでいただきたいと考えています。でも先程述べた通り、簿記って実は敷居が高い。直感的に「仕訳」が理解できる方法って何かないかな?その答えを見つけるのが私の会計人としてのテーマの一つでもあるのです。